高齢ワンちゃん、ネコちゃん② ~慢性腎不全~
ネコちゃんの寿命のギネス記録は30年を超えると言われています。平均はおそらく15年前後で、もちろんこれには全てのネコちゃんが含まれるので、一般的に長生きすると言われる交雑種(いわゆる日本猫)と純血で血統付きのアメリカンショートヘアーやマンチカンで寿命を比べると、まったく異なる印象を受けます。
当院で診た最高齢のネコちゃんは、出生が定かでないため確定的ではありませんが、確か25歳くらいだったと記憶しています。さてこの高齢のネコちゃんが亡くなった原因は何だと思いますか?と聞かれれば、動物病院の獣医さんの多くは口をそろえて同じ病名を言うでしょう。
その病気とは、慢性腎不全です。
腎臓は体内の老廃物をおしっことして排出する器官です。血液中から毒素を濾し取り、尿として体外へ放出します。この機能が失われるということは、体外へ出さなければならないおしっこが体内に留まってしまうということです。その結果中毒症状が現れます。慢性腎不全とはこの経過が慢性的に、つまりゆっくり段々と進行していく病気です。圧倒的に高齢のネコちゃんに多いです。
最初はほとんど症状を示しません。飲む水の量が増えたり、薄いおしっこを沢山するようになると危険です。極端に元気や食欲が無くなったり、口臭がきつくなったり、吐く回数が増えるようになってきてようやく気づく飼い主様が多いです。しかしそのころにはもう腎臓全体の3分の2とか4分の3の機能が失われているのです。さらに病態が進み末期になると、昏倒したりてんかん発作などの神経症状、また貧血を起こすこともあります。
診断は、以上の様な症状が無いかの問診と脱水度合い、血液検査で行います。
腎不全は治る病気ではありません。処置として点滴や皮下輸液を行いますが、症状緩和の為にしているのであって治療ではありません。腎臓は一旦壊れると修復できない器官なのです。
ところが病態の進行度合いにもよりますが、集中的に輸液療法を行い血中毒素の濃度が下がると、症状は軽くなり復活することがあります。その後は投薬と食餌療法、定期的な輸液療法などで維持していくことになりますが、今までの経験で血液検査の数値の割によく持ちこたえているな、という症例をいくつも見てきました。
飼っているワンちゃんネコちゃんがそろそろ高齢だなと思われたら、症状が無くても健康診断として必要最低限の検査をおすすめします。もし腎不全の初期段階なら投薬で抑えることも出来ますし、検査結果に異常が無ければそれはそれで良い確認になります。検査結果を知ることは怖いかもしれませんが、知らなければ対処できないことは多いです。物言えぬワンちゃんネコちゃんの代わりに、飼い主様の決断が必要です。